【海外研修】タイ研修報告➀ 山岳民の暮らしを体験する
本校の代表的な海外研修のひとつであるタイ研修は、今年は12月20日(土)に旅立ちました。日本では味わえない多くの貴重な出会いと経験を得て、12月31日(水)に帰国予定です。引率で生徒たちと一緒に過ごしている伊藤豊教諭から現地レポートが届きましたので、以下ご紹介いたします。
「暁の家」はタイ北部、チェンマイ県とチェンライ県の境ウィアンパパオという街にあります。中野穂積さんという方が、ここで長く山岳少数民族に仕える活動を続けています。
タイ研修2日目の午後、中野さんは花咲く庭で私たちを迎えてくださいました。
中野さんは有機農法によるコーヒー栽培を始めとし、山岳少数民族の子女のための奨学金制度の運営、伝統的な織物の継承活動など多岐に渡って活躍されています。講演会では、生徒寮の寮母になったいきさつ、日本兵をよく知るモン族の老人、アボカド栽培を学び自ら発展させた村人たち、コーヒー農園を開拓した経緯など、その他にもたくさんのお話を聞きました。
3日目、暁の家からクルマで山あいの道を登って1時間、私たちは中野さんのコーヒー農園へ行きました。山岳民族の農園は山の斜面にあります。ここへ来る車窓からは、驚くほど急な斜面にバナナが大きな葉を揺らしているのが見えました。
中野さんの農園は、標高1,100メートルの高地にあります。クルマを下りて山の尾根を伝って歩くと、木々の間から山々の連なりが見渡せます。道の脇の斜面にはコーヒーの木が植えられ、赤く熟した実をつけています。私たちは斜面を下りて、実を一つ一つ摘んでゆきました。人間には厳しい環境ですが、ここでこそ高品質なアラビカ種コーヒー豆が採れるのです。
コーヒー豆200グラム1パックを得るために、何キログラムのコーヒーチェリーを摘み取ればよいでしょうか。
摘み取った実は、その日のうちに赤い皮を剥き、水洗いと発酵をくり返し、乾燥させて薄皮を剥き、焙煎して水分が抜け、商品になるまでにどんどん軽くなっていきます。精製の過程で不出来な豆を取り除きます。暁の家の有機コーヒー豆を基準に考えると、200グラムの焙煎豆を得るために約1.6キログラム、800粒以上のチェリーを収穫する必要があります。1粒ずつ赤く熟した実を選び、傷を避けながら手で摘み取る作業は、数字で見るほど単純ではありません。
この日はパッキヤ村にホームステイしました。アカ族とラフ族が共に暮らす村です。村の若者たちの案内でアカ族の餅つきを体験したり、機織りを見学したりするうちに、生徒たちは村の雰囲気になじんでいきました。
アカ族の料理をいただいた後、村の教会の牧師さんの家に招かれました。村の人たちが集まって、クリスマスイベントで披露する歌やダンスの練習をするというのです。
子供たちのダンスに合わせて、生徒たちも一緒に踊りました。出発前に練習してきた「もろびとこぞりて」の四部合唱を披露すると喝采を浴び、リクエストに応えてまた歌い踊り、レパートリーが尽きると大人たちのダンス練習に加わりました。
こうして共に楽しんでいる間、村の人たちと私たちの境界線がなくなって、一つの「私たち」になれたように思えました。
聖学院がパッキヤ村を訪れるのは今回で4回目です。引率者には顔なじみの方々もいます。今後もこの村との関わりを大切にしていきます。
次回は、山岳少数民族の子供たちが暮らす「メーコック財団」での活動をお伝えします。










