SEIG NEWS

校長対話『動きを作る理科』

今回、戸邉校長は、理科の教科会議に参加。会議では、「理科のレポート」について話し合っているところだった。「レポート」は、生徒の成長に合わせながら、科学的な思考を育てるのに有効な思考作業であるから、互いに生徒が作成したレポートを持ち寄り、生徒の学習状況やその状況に応じた学びの視点をどのように開発していくのかについて語り合っていた。

戸邉校長: おっ、これは、生徒たちのレポートだね。私もちょうど、「書く」ということの重要性について考えていたところだ。「文章化」という考える行為を、聖学院全体の大きな流れにしたいと思っている。究極的には、オープンキャンパスなどで大学に訪問して、教授と話し合う機会があった場合、そこで英語で書いたレポートを提示しながら、何を大学で学びたいのかきちんとプレゼンできるようにしたいと考えているが、どうだろう。

理科: 理科のレポートの場合は、最終的に英語で書くというのは、人文系や社会科学系の教科に比べると、あくまで相対的ですが、簡単かもしれない。高2 あるいは高3 になると、理科のレポートのフォーマットを使いこなして作成する生徒が多くなるので、あとはそれをどのように英語に変換するかだけだから。

校長: それはいいね。ただ、レポートの書き方ができてから、英語にするというのでは、実際には目標は達成できないかもしれないと思うが、そこはどうだろう。

理科:今、日本語で制作している「レポート」も、中1 から、いきなり丸ごと書くわけではない。レポートの穴埋めからはじまって、徐々に、記述する量を多くして、高1 あたりから、全部自分で書くというプログラムにしている。英語にするのも、そのステップに合わせて工夫していけば可能ではないか。

校長:なるほど。それに理科の先生方は、大学や大学院時代、実際に英語で書いていただろうし、科学論文の英文そのものは中学英語でも、ある程度のレベルまで書けると思う。問題はテクニカルタームというか各分野で使われる専門用語。これについては、実は理科でしか学べないだろう。

理科:元素記号などが典型的ですが、英語と対応しながらのほうがわかりやすいということもある。もちろん、生徒によっては、そこまでいかないというケースもありますが、大事なことは、丸暗記するよりも、いろいろなものを結びつけるネットを広げること。実験をやるのも観察をするのも、英語を結びつけるのも、実はこのネットを広げるチャンスであり、ネットを広げられるようになれば、記憶もしやすくなるはず。実際、資料集にも英語と対応している部分がある。だから、定期テストで、科学者の言葉を英語で出し、それを日本語訳させる問題もすでに出している。

校長: ネットを広げるというのは実に大事なことだよ。何も知識だけではないからね。今、先生方は互いに授業見学して、学び合っているよね。生徒も同じではないかな。他のクラスの授業の姿をみて、どういう姿勢で受けているのか、どんな反応しているのか見ると、互いにいい刺激になるのではないか。そういう緊張関係を生むネットも広げようよ。

理科: 同学年の横のラインだけではなく、縦のライン、特に先輩の授業の見学は、今学んでいることがこんなところにまで発展するんだということに気づくかもしれないし、部活で知っている先輩の姿とは違う先輩を知り、モチベーションが上がるということもあるだろう。

校長:それはいいね。いいことばかりでないかもしれないが、オープンであることが重要だ。学びは、好奇心やなぜだろうと疑問を持つことが大事だが、それにはオープン・マインドが大前提。そうなれば、ネットやつながりが広がって、動きがでてくる。学校は、ダイナミックな動きがないとね。動きをつくろう。

理科:実際に高2 と高3 が作成したレポートがあるので、ちょっと見てください。

校長: こんなに書き込んでいるとは、聖学院の生徒はやるじゃないか。この最後の要約の部分を、まず英語にするところから始めてもよいのではないかな。レポートの多くをグラフや表が占めているから、実際にはダラダラ英文を書かなくても済む。やはり、理科で、英語のレポートは書けるね。そう確信したよ。ありがとう。

理科:従来の日本の教育のように生徒が空気を読むのではなく、自ら空気を動かしていけるように育てたい。私たちの目指す21 世紀型教育とは、高度な知識を詰め込むのではなく、生徒自身が知識を様々なものに結びつけネットを広げてみることで、空気を一変させていく力を身に付けさせること。それは理科でもできる、いややらねばならないと思っている。

校長: 数学オリンピックばかりでなく、物理や生物、化学オリンピックなどのチャンスも大いに活用してほしい。「動きをつくる理科」に大いに期待しているよ。