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【海外研修】タイ研修旅行レポート③最終回「がんばる心の基盤をつくる」

育ってきた環境は異なっても、同じところとちがうところを大切にしあいたい

メーコック財団の子供たちが親元を離れて暮らしていることには理由があります。彼らの背後には貧困、無国籍、麻薬、家庭崩壊など、本人の努力だけでは解決できない社会課題が横たわっています。
事前学習をして、生徒たちはそのことを分かっていました。その上で、引率者は生徒たちに「本気で、たくさん遊んでほしい」と頼みました。壊れた家庭を直すことなど私たちにはできません。しかし、目の前にいるその子を大切に思い、遠く離れていてもずっと応援しているよとメッセージを送り続けることはできます。

自分の通う学校を紹介し合いました

元校長戸邉治朗先生が活動の源泉について語ってくれました

アノラックさんの料理はどれもおいしい!

交流促進と組織的運営の実践を目的として、生徒主導の活動を3つ行ないました。 
【1】バザープロジェクト
メーコック財団近くの公園でバザーを開きました。子供服、婦人服、スポーツウェアなど古着を持てるだけ持って来ました。いくらで売るのが適切か、現地の感覚を採り入れて値付けをしました。
私たちが公園に着いて服を並べていると、すぐに複数の女性が寄って来て値段交渉が始まりました。子供たちの助けを借りたり、英語や簡単なタイ語を使ったりして売りました。2時間ほどでほぼ売り切れになりました。売り上げはすべてメーコック財団に寄付しました。

毎年聖学院のバザーを待ってくれている現地の方々

【2】記念Tシャツプロジェクト
この年かぎりのデザインで記念Tシャツをつくりました。事前学習の時点でメーコックの子供と聖学院生がイラストを複数点描き、選ばれた2点をTシャツ用にデザインし、版をつくります。無地のカラーTシャツのサイズを確認し、購入して版と一緒に現地に持ち込みます。現地ではプロジェクトメンバーが指揮をして、一人一人胸や背中にプリントします。
最終日、それぞれのTシャツを着て記念写真を撮りました。お互いにサインを書き合って、かけがえのない思い出のTシャツができました。

一人一枚好きな色を選べます

いろとりどりの記念Tシャツ

【3】料理プロジェクト
メーコックの子供たちやスタッフのために、生徒たちが料理をふるまいました。今年のメニューは油そばと餃子です。
全員が参加できるように、小さい子も手伝えるように、あえて調理の工程を増やしたレシピにしました。麺は粉から打ちました。粉をある程度練り込んだら、ビニール袋に入れて小さな子に踏んでもらいました。足踏みしたりジャンプしたり、皆よろこんでくれました。みんなで餡を皮で包む作業も楽しい時間になりました。昼から夕方までかけて料理しました。

皆で料理をする、こういう時間がとても大切

出発前に練習してきた羽付き餃子を焼きます

タイ研修旅行は、メーコック財団の他に「アブアリ・プロジェクト」とも連携しています。アブアリ・プロジェクトは主に無国籍の専門学校生の就学と就業を支えています。
無国籍者と聞いて不思議に感じられる方も多いと思います。歴史的、政治的な経緯から、タイの山岳少数民族には無国籍者が少なくありません。タイ国内にどれくらいの無国籍者がいるのか、正確な数値はつかみ切れていません。しかし、アブアリにもメーコックにも国籍を持たない児童生徒がいます。ここでは無国籍は身近な問題なのです。
無国籍者であっても学校に通うことはできますが、卒業を境に巨大な格差が露わになります。無国籍者は公務員や大きな企業の社員になることができません。医療保険もありません。移動の制限も大きく、都市へ出稼ぎに行くこともできません。そして、後から国籍を取得することは極めて困難です。
私たちに与えられている権利は、無国籍者には特権のように見えるでしょう。アブアリ代表のアリヤ・ラッタナウィチャイクンさんは、そんな彼らの未来の選択肢を増やそうと努力をされています。

みつばちプロジェクトからアブアリプロジェクトへ支援金を贈りました

アブアリの専門学校生たちをメーコックに招き、同年代の生徒同士で語り合う会を開きました。「今いちばんがんばっていることは?」「将来の夢は?」「今心配に感じていることは?」など、そんな話をしました。
アブアリの学生たちは、専門学校での学びを大切にしています。いつか自分の店を持とうと夢見ています。そして、自分のことよりも家族のことを心配していました。
交流会はにぎやかなうちに終えました。初対面の緊張と興奮もありました。どのような将来を選ぶのか、選んだ将来を歩んでいくには何が必要なのか、帰国した生徒たちに聞いてみたいと思います。

たとえ境遇がちがっても同じ時代を生きる仲間だ

日タイの通訳をつけてしっかり話しました

タイは格差の大きな社会です。誰かに支えられることが当然ではない子供たち・若者たちにとって、誰かが自分を支えてくれていると実感できることは、厳しい社会を幸せに生きて行くために必要不可欠なことです。
将来、彼らが困難にぶつかってもたくましく克服してゆける、がんばる心の基盤を一緒につくってほしいと願います。翻って、日本で学ぶ生徒たちにも多かれ少なかれ危機に直面する事態が起こります。同じ時代を生きる仲間として、タイで出会った人たち、共に旅をした聖学院の仲間たちのことを覚えて、互いに与えあい、受け取りあえる幸福な関係性を築いてほしい。誰かを思い、がんばる心の基盤をつくろう。それがこの研修旅行を企画した私の願いです。

3学期は報告書冊子の発行にむけて事後学習をしてゆきます。(引率:伊藤 豊)

鐘の入った塔の前で、共に生きる仲間と一緒に