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【美術部】キャンバス地塗り実習②

キャンバス地塗り実習 第2回

キャンバス地塗り実習を高校美術部が体験しています。今回は第2回目です。

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本格的な品質のキャンバスを手塗りで制作します。(写真1)

キャンバスとは、油絵など、絵画に多く用いられている麻布のことです。今回は生の麻布の生地を木枠に張り、地塗りをする工程から行っています。絵画技法の歴史上、古くから伝わる最もポピュラーな技法です。

前回は、麻布を木枠に張る工程まで行いました。(キャンバス地塗り実習第1回参照

今回は、布に白色地塗りを行うための準備として、目止め作業を行います。

(指導 美術科教諭 伊藤隆之)

 

 

Ⅱ.麻布の目止め

 

①     麻布の目止め

キャンバス地、つまり麻布地は糸と糸を編んで織っているため、当然隙間がある。(写真2)そこに塗料を均一に塗るので、目止めを的確に行う必要がある。目止めには古くからの技法で膠水を用いる。膠とは動物の皮を煮て抽出したコラーゲンなど、ゼラチン質が主成分で、水に溶かして使い、接着剤として利用される。(写真3)主に昔は紙を貼ったり、日本画の絵具の媒材としても扱われたりしている。低温で固まる性質があるので、目止めには最適である。18度以下の条件になると凝固する。

 image004(写真2) image006(写真3)

 

 

膠は粉末状で売られている場合がほとんどで、画材店で安価に手に入る「粉末膠」が手頃である。「ウサギ膠」は高級で、より柔軟性を求めるキャンバス地に仕上げたい場合に使うことを勧めるが、品質が安定しないため、その年によって接着力にばらつきがある。

目止めに使う膠水は、水1リットルに対して70グラムの膠を溶かす。使用したい5~6時間前に膠を水に浸しておく。膠は水を吸って膨らみ、水になじみやすくなる。これを膨潤(ぼうじゅん)という。(写真4)

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それを火にかけ、棒でかき混ぜながら、固体が無くなるまで溶かす。この場合、直接ビーカー等を火にかけず、水をはった鍋で温めるなど、沸騰させないように注意する。この作業を湯煎(ゆせん)という。(写真5)膠水を沸騰させてしまうと、接着力が低下するなど、膠の成分が壊れてしまう。

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湯煎(ゆせん)した膠水を、容器にうつし、含みが良くコシが強い刷毛で麻布に塗布する。(写真6)このとき、温めた状態のままの膠水を麻布に塗ると、裏地まで浸透してしまい、目止めが上手くいかないので、必ず冷ましてから使う。麻布の目止めは、均一に行うので、要領よく刷毛を運んで塗布することが大切である。均一に塗るには、一度に多くの量を塗らず、薄く3層程度に分けて塗るのが良い。1層目は麻布が少し濡れ色になるぐらいの量で塗る。(写真7)塗るときには、一列ずつ、同じ作法にする。膠水を刷毛に含ませる場合も、同じ量をとるため、刷毛を容器の端でしごく回数も同じにする。(写真8)

image012(写真6) image014(写真7)   image016(写真8) 

2層目以降は、麻布の乾いた様子を見計らい、麻布の表面を確認しながら、多めの膠水を刷毛に含ませ、目止めをしっかりと行う。また、1層目に塗った刷毛の方向と交差するように、刷毛を動かす向きを変える。膠水が少しゲル化に近づいた状態の方が、目止めが上手に行える。夏場など、気温が高い場合は、やりにくい。木枠のサイズによっても異なってくるが、小さいものは全部で2層程度、F100号などの大きいサイズは、3層程度必要になる。(写真9~11)

image018 (写真13) image020(写真12)  image022(写真11)

 

 

 

ここまで2日目の工程終了。約2時間程度要した。

次回、白色地塗り。