入試・説明会情報

「変わる教育 聖学院 君もクリエイティブクラス」 本間勇人氏のブログから

 第3回学校説明会でも、2013年入試で行われる「思考力テスト」のためのセミナーを実施した。そのセミナーの取材に3人(3社)の方が聖学院に来校し、 熱心にセミナーを参観していただいた。
 そのお一人に私立学校研究家の本間勇人氏がおりましたが、彼がご自分のブログに「変わる教育」というタイトルで、聖学院の思考力セミナーの様子を紹介しておりましたので、ご紹介します。 


 ☆聖学院の説明会では、毎回驚くべきプログラムが実施されている。それは「思考力セミナー」。同校が標榜・実践している21世紀型教育や授業のモデル授業である。学んだ力(記憶)だけではなく、学ぶ力(方略)と学ぼうとする力(モチベーション)、そして共に学ぶ力(チームビルディング)を育てる教育である。


聖学院の知のワークショップのシーン(高1)

 ☆入試問題は学校の顔であるとは、受験業界では人口に膾炙されているが、来春、通常実践しているプロジェクトマネジメント型の授業を、教科の試験同様に、「思考力テスト」として行う予定になっている。それゆえ、「思考力セミナー」で準備をしてもらおうという意図で行っているのである。

☆世の中は、グローバル人材育成だとか大学生や企業人の内向き志向を外向き志向にシフトしようとか、ガラパゴスからグローバリゼーションへと喧しいが、すでに聖学院ではその方法論を実行していたのである。

☆解なき時代、不安で流動的で絶え間ないカオスを生き抜くフラックス世代にあって、必要な知は、与えられるものではなく、自ら創り上げていくのである。そしてそれは一人の力では編集しきれないほどの専門知が必要である。アイデアと専門を結びつけて化学反応を生み出すリーダーシップはいかにして可能か?そこに聖学院の教師は挑んでいる。というよりも、そういう世界を生徒たちといっしょにつくるのを楽しんでいる。教師もまた好奇心の塊なのである。

☆そんなわけで、昔の同僚も取材に来ていた。同僚は、プロジェクト・ベースド・ラーンニグのプログラムメーカーで、いっしょに延べで200校の探究学習系のプログラムの支援をしてきた。だから目を輝かして取材をしていた。というわけで、今回の思考力セミナーをご紹介しよう。

☆アイスブレーキング。まずは少ないリソースでアヒル(トピックス)をつくる。個人ワーク。リソースであるマテリアルはレゴ。

☆アイスブレークは、プログラム全体のモチーフがすべて詰まっているモデルである。これは米国プレップスクールや米国の大学の講義では当たり前の方法でもある。まずはシンプルなモデルの理解が、プログラムの展開につれて、発想の核として内在化される。ここに外的モチベーションが内燃にシフトする仕掛け(学ぼうとする力)がある。

☆米国の場合は、J.デューイのダイアローグ(弁証法)をプラグマティックに構築した教育が今も脈々と生きているから、アイデア(イデー)は種から芽がでて、それがやがて大輪の花を咲かせ、再び実を結ぶという一連の展開をするプログラムが多いはず。この種がアイスブレーキングのときに提示されるモデルである。

☆さて、テキストを見ていただければ、この段階で、振り返りを入れている。ワークをやってみて気づいたことは何かと。ここでポイントは、教師が一方的に教え込まないということである。これも学ぼうとする力を育成するが、何より自ら考える種(学ぶ力)が埋め込まれている。それから、元同僚がすかさず近寄ってきて「レゴという道具を使うことによって、思考のメタファーを明確に無意識の中に埋め込みましたね」と。その通りである。

☆それから自己紹介は、言うまでもなくチームビルディングのきっかけづくり。

☆こうして、レディネスはやがて輻輳するメタファーの展開となっていく。輻輳の風は、人工的なプログラムの雰囲気を自然な雰囲気にし、プレイフルにする。これはMITメディアラボの十八番である。「タロという人間嫌いの像が病気で倒れている。薬をのまさなくてはならない。それにはどうしたらよいか」という問題解決のプロセスを物語のメタファーで考えさせる。

☆いつもは同校の数学のスペシャル講座で活躍している東大フェローもチューターとして参加。ワークショップさながらの授業が展開する。そして、いよいよレゴを使って組み立てた物語(シートに記入した個人ワークから、チームで一つのものにするチームワークを経る)を、見える化する。

☆この段階ではレゴは知の道具としてのメタファーに変容している。知のリソースとしての山が設置されている。

☆一つひとつが色々な形をしている。つまり多様な知識の山である。整理はされていないのが特徴だ。アイスブレーキングの段階では、リソースはバラバラであるが与えられていたが、この段階では「サーチ」する行為がポイントになる。学ぶ力のメタファーがここにはある。

☆問題解決するために、必要な知の道具を収集しにいっせいに行動し始めた。そして次はミッションインポッシブル♪

☆他のチームの進捗状況やアイデアをリサーチする時間が設けられる。チームはライバルではない。オープンマインドを生成する仕掛けとしてとても大切な瞬間だ。もちろんこれが組織vs.組織になったときには、知的所有権の問題をどうするか考える仕掛けを入れるが、今回はチームビルディングのプログラム。

☆そして、物語編集→レゴで見える化(知識の構築のメタファー)のあとは、振り返りを再び入れる。どこが優れているのか自己評価するのである。ここがプロジェクトマネジメントの重要なプロセス評価である。日本の教育で振り返りをすると、まず問題点をあげつらっていく減点方式。しかし、聖学院の思考力育成型プログラムは違う。改善点は見出すが、見出したらさらにパワフルにするし、自分たちのコンセプトを明確にすることによって、思考の回路の回転速度を促進するのだ。スタンフォード大学やシリコンバレー流儀のエンパワーメント評価が流れ込んでいる。

☆取材に来ていた元同僚はまたまたすかさず飛んできて、聖学院の教育はグローバルと言っても、米国流儀ですよねと。そりゃそうだよ、米国生まれのプロテスタンティズムの会派だし、初代校長石川角次郎は、東大初総理の加藤弘之と激突し・・・と回答していたら、本間さんすっかりオヤジですよと、一本取られた。ともあれ、取材もワクワクしながらやれたわけだ。

☆まとめとして、体験、イノベーション、ダイバーシティーの話がシンプルに伝えられた。この3つの情報を伝えるのにこれだけのプログラム過程が必要だったのである。ハーバード大学のマズール教授は、一般に、講義形式の授業は情報伝達だけで、脳波は活性化されない。情報伝達に到る過程にディスカッションなどの仕込が必要なのであると。なるほど、元同僚の言う通りだ。聖学院の思考力育成のプログラムの仕掛けは、米国のエッセンスをうまく活用している。

☆そして、最後に受験生にエールを贈るレゴのお守りをプレゼント。先生方が徹夜して造ったそうだ。優れた教師のサーバントリーダーシップは、古今東西同じである。それは一期一会を大切にする生徒への愛の形なのである。

 本間勇人氏のブログ
 『私立学校研究 (c) ホンマ ハヤト』
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