入試・説明会情報

第4回思考力セミナー報告

 11月10日(土)、第4回目の思考力セミナーが行われた。今回で複数回目という受験生も、初めてという受験生もいたが、全員が一生懸命に取り組んでくれていた。

 今回の題材は写真。ミャンマーのインレー湖に暮らすインダー族という少数民族の写真を利用してのセミナーだ。まずミャンマーを聞いたことがあるかと質問してみると、ほとんどの受験生の手があがる。さすがである。ただ、さすがにインダー族について聞いたことのある人はいなかったようだ。

 まずはこのインダー族の写真を五枚、見てもらう。彼らの住居、市場、漁師、僧侶の托鉢風景などの写真を見ながら、そこから何を読み取ることができるのか、自由に書いてもらった。何も知らない民族の写真だからか、みんな写真を食い入るように見つめながら、それぞれ考えたことを書いていく。魚を売っている人がいるから、主食は魚なのだろう。ご飯をあげている(托鉢)から、優しい人が多いのではないか。水の上に家があるから、湖の上で暮らしているのだろう。川が道の代わりをしているのではないか。写真を見ては考え、発見し、冊子に書いていく。みんな真剣だ。

 次は自己紹介とともに、それぞれが発見したことを、グループの中で発表してもらった。セミナーの参加が複数回目の受験生になると、慣れてきたのか割とすらすらと発表できるようになってきた。自分とは違う発見の場合は、それを冊子に書き込んでいく。やはりみんなそれぞれ異なった視点を持っているから、お互いの発見は新鮮な驚きでもある。

 発表が終わった後、簡単にインダー族の情報を文字で示してみる。そして、写真の情報の長所と短所を書いてもらった。「写真はイメージをしやすいけれど、誤解もされやすい」、「どんな写真を見るかで、良いか悪いかを決めつけやすい」、「表情はわかるけれど、気持ちが読み取れない」など、なかなか鋭い指摘も多く、感心させられる。

 新たな問の探求では、写真を見た人の「この民族は不便そうだしかわいそう」という意見に対し、自分がどう思うかを書いてもらった。ここでもさまざまな意見が出てくる。「確かに不便そうだし、大変そうだからかわいそうだと思う」、という意見もあれば、「かわいそうなんて失礼だ」、と書いた受験生もいる。素直に、「僕から見たら不便かもしれないけれど、彼らにとっては不便ではないかもしれないから、かわいそうかどうかわからない」、と書いてくれた受験生もいる。日本の文化とは全く異なる生活をしている人たちを垣間見ることによって、彼らは彼らなりに想像し、考え、自分の意見を引き出している。これもまた大事なことだ。

 最後は100字要約。今回は、このインダー族に関する感想が多かったが、写真による情報についての鋭い意見もあった。いつかこのインダー族に会いに行きたい、と書いてくれた受験生もいたので、ぜひいろいろ調べてほしいとも思う。
物事というのは、気になれば知りたくなる。知りたくなれば、誰かに言われなくても自分で調べるようになる。そして得られた情報は、ただ与えられただけの情報よりは、ずっと心に残っていく。そして、自分で調べた情報からさらに知りたいことが増え、さらに調べ、考え、知識は広がっていく。

 もう11月に入り、受験生にとってはだんだん緊張し、焦りも覚えてくるような時期かもしれない。それでも、そんな受験勉強をやっている中でも、気になったこと、これはどういうことなのだろう、と不思議に思ったことを大切にして、そのことについてとことん調べてみるのも大事だ。
 すでに思考力セミナーも四回目を数え、今年度は残すところあと二回。12月の思考力セミナーでは、新しい題材が準備されつつある。ぜひまた参加してくれることを願っている。担当者としても、顔見知りが増えていくのは、何よりも楽しくうれしい。