SEIG NEWS

心をロックさせない(7月8日全校礼拝にて)

ヨハネによる福音書2章13~22節

ユダヤ人の過越祭が近づいたので、イエスはエルサレムへ上って行かれた。そして、神殿の境内で牛や羊や鳩を売っている者たちと、座って両替をしている者たちをご覧になった。イエスは縄で鞭を作り、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒し、鳩を売る者たちに言われた。「このような物はここから運び出せ。私の父の家を商売の家としてはならない。」弟子たちは、「あなたの家を思う熱意がわたしを食い尽くす」と書いてあるのを思い出した。ユダヤ人たちはイエスに、「あなたは、こんなことをするからには、どんなしるしをわたしたちに見せるつもりか」と言った。イエスは答えて言われた。「この神殿を壊してみよ。三日で建て直してみせる。」それでユダヤ人たちは、「この神殿を建てるのに四十六年もかかったのに、あなたは三日で建て直すのか」と言った。イエスの言われる神殿とは、御自身の体のことだったのである。イエスが死者の中から復活されたとき、弟子たちは、イエスがこう言われたのを思い出し、聖書とイエスの語られた言葉とを信じた。


今日で1学期の授業は終わりです。
通常授業の最後の日にふたつのことを考えてもらいたいと思います。
「聖学院はなぜOnly Oneを求めるようにみなさんに勧めているのか」
「人類はなぜ学問を行ってきたのか」
質問は二つですが簡単にまとめればこういうことです。
「聖学院の学校生活とは何か」です。

この問いへの入口として今日の聖書の箇所を選びました。
イエスがユダヤ人たちと論争をする場面です。
イエスが言います。
「この神殿を壊してみよ。
三日で建て直して見せる」。
これはイエスが自分の体のことを言われたと但し書きが付いています。
何をイエスは言っているのか。
現実の世界で起こったことは
AD70年にエルサレム神殿はローマ軍によって焼き払われます。
イエスは十字架にかかり三日目に復活をしましたが、その後、姿は見えなくなりました。
神殿は壊れたままです。
イエスはどこにもいません。
せめて復活したのですから、その後、ずっといてくれたらこの話は本当だったと後世の人々も簡単に納得がいったことでしょう。
ですが、現実には、このイエスの言葉が事実になった証拠を私たちは持っていません。
なのになぜ教会はこの物語を2000年以上も保存し続けてきたのでしょうか。
おそらくこの物語の込められたテーマが大事だったからでしょう。
この物語のテーマとは何か。

神殿とはイスラエルの人々にとってはもっとも大切なものです。
それが壊される。
神殿と重ね合わされている自分の体。
これももっとも大切なものです。
それが失われる。
この物語のテーマは自分が大事だ、大切だ、と思っているものが失われる、ということです。

私たちにとって大切なものはなんですが。
家族、友人、自分の進路、学歴、大人になれば肩書も大事になります。
冨、権力は言うに及ばずです。
もちろん、自分の体、命も大切です。
それらが全部、失われる。
当然、これと直面した私たちの心に生じるものは失望、絶望、出口のない真っ暗な闇の中に放り込まれたような感覚でしょう。
もうどうすることもできない。
心が固まる、ロックされた状態です。

イエス様の言葉に注目してみましょう。
神殿を壊しても建て直してみせる。
体を失っても復活してみせる。
何を言っているのか。
誰もが「終わりだ」と思っているところから先に進んでみせるということでしょう。

なぜOnly Oneを求めることを聖学院は勧めているのか。
Only Oneは見つけられないからです。
これが本当の私だ、と思っても、落ち着いてよく眺めてみると、そこには自分以外のものがまだまだ色々貼り付いているのが見えてくるはずです。
流行であったり、家族や、仲間の評価であったり、自分の過去であったり、今の自分でないものが沢山貼り付いているのが分かります。
分かったら、それを剥がして、また本当の自分Only Oneを求めていく。
きっとまたOnly Oneは見つかるでしょう。
でもまた眺めていると自分以外のものに気がつきます。
そうしたらまた、同じ作業を繰り返していく。
Only Oneを探す。
それは「ここが終わりだ」「ここが本当だ」「これが答えだ」と思っても、もっと先がある、その感覚が身に付いてきます。
そういう心、体になるためにOnly Oneを探すことを勧めています。

学問も同じです。
「これが答えだ」「これが真実だ」
人類はそういうものを何度も発見をしました。
ところが、それではまだまだ辻褄が合わないものがしばらくすると現れてきます。
ニュートン力学、相対性理論、量子力学、
ユークリッド、非ユークリッド、
みんなその流れの中にあるものです。
「これが答えだ」と思っても、まだ先がある。
まだ先に行かなければならない。
心をロックなどさせてはいられない。
いつでも先に進める心を準備しておく。
それが学問をして身につくことです。

聖学院の学校生活でみなさんに会得してほしいもの。
心をロックしないです。

ロックされた心。
「これが答えだ」に固執している心
有頂天でも、失望でも、感情は正反対でも心の構造は同じです。
心がロックされた状態
その心は戦争を引き起こす心の在り方と同じです。

平和を作り出す。
「平和のための答えはこれです」
それは偽りです。

平和を作り出す心はロックされない、どんな状態でも先に進める逞しく、しなやかな心です。

平和を作り出すものは幸いである。
彼らは神の子と呼ばれる。

これもイエス様の言葉です。
平和を作り出すものになってほしい。
それが聖学院にいる間に身につけてほしいものです。
ロックされない心を育てるため、今日も、もっと先へと進んで下さい。